#子供の頃の話
私が住んでいたのは地方都市の中でも不便な場所で、
鉄道もバスも本数が少ない。
義務教育の学校にはまだエアコンないのが当たり前で、
中学も購買部なんてなくて、
お昼の外出禁止(買える店もないけど)。
自販機だって近くにないときたもんだ。
だから、
食事も飲み物も持参が命。
自分の住んでいる場所も田舎なら、
隣町だって田舎なのです。
とある合同練習があって、
先生の車にのっけてもらって、
よその中学の音楽室に集まって練習がありました。
午後の休憩は2回あると事前に聞いていました。
1回目の休憩。
持参した水筒を取り出しました。
練習中はずっと飲むのを我慢していたから、ホントはがぶ飲みしたい。
でも、
いま飲み干しちゃったら、次の休憩と帰る時に飲み物なくなっちゃうしなぁ…
我慢するか。
今みたいな保冷機能なんてない水筒ですから、
あらかじめ冷凍したのを持参してたけど、すっかり溶けてました。
もはや特別美味しいわけでもない飲み物だけど、大事にとっとかないとね。。。
って、
しまおうとしたら、
Nちゃん「足りひん!アンタのちょーだい!」
って言ってきた。
私「ええ!!(絶句) 自分のを飲んでよ。」
Nちゃん「もう全部飲んじゃった!足りひんからアンタのちょーだい!」
私(そんな。私のは余ってるんじゃない。大事に残してるだけなのに。。)
みるとNちゃんの水筒の大きさは、私の3分の2ほどの小ささでした。
私「そんなに足りないなら、お母さんに頼んでもっと大きいの持ってきなよ!」
って、結構強く言って、自分の水筒を渡して、
私「全部飲まないでよ!私のがなくなるから!」
って言いました。
Nちゃん「わかってるよ!何よ!ケチやな!」
と悪態ついて、私の水筒から飲んでました。
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翌日。
同じ合同練習があって。
休憩になるとまた
Nちゃん「足りひん!アンタのちょーだい!」
と言い出した。
私(昨日とおんなじ水筒じゃんよ…)
Nちゃんは昨日と同じ水筒を持ってきてました。それじゃ足りないってわかっているのに?
私「…キミのお母さんは、キミに『そんなに飲んじゃダメ』と制限をかけているの?」
Nちゃん「いーーや?」
と、キッパリ否定。
私「ムカッ だったら!もっと大きいの持ってこいって言ったやん! 足りないのわかってんでしょ!」
と、他校にお邪魔しているのにケンカしてしまいました。
Nちゃん「あーもうハイハイ。ケチやなあ」
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Nちゃんは高校も同じでした。
ある日、同級生が「お家に親戚が来て大量に作ったから」と、
クッキーをたくさんわけてくれました。
Nちゃんも私ももらいました。
その日は図書室の裏方で、司書さんの作業を手伝っていました。
作業が終わると司書さんがお茶を淹れてくださったので、
私「あ、それならお菓子がありますよ。私ももらったものですけど…先輩もみんなもどうぞ」
と、
同級生からもらったクッキーを机にひろげました。
司書さんや、先輩が食べてくれるのはわかるんだけどさ。。
同じクッキーを所持しているはずのNちゃんも当然のように私の出したのを食べだしました。
私「Nちゃんはだめ!あなたはもらったでしょ!…食べるんならNちゃんのもここに出して」
Nちゃん「え、別にエエやん」
私「ヤダ。Nちゃんはダメ」
(だってホントは…甘党のお父さんのために持って帰りたかった。。Nちゃんもここで出してくれたらいくぶんか残ってお父さんに持って帰れるかもしれない)
Nちゃん「はぁもう、ケチやなあ」
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社会人になって、
私は東京にうつって。
Nちゃんから電話がかかってきて
Nちゃん「ナラコ?東京にも5千円くらいで泊まれるホテルがあるって聞いたんだけど。」
私「え?知らない…」
Nちゃん「ナラコ東京にいるんだから、ナラコの方が詳しいと思って!」
私「(都に住んでるからこそ東京のホテルなんて泊まらんから知らん)…知らない。誰が言ったのそんなこと」
Nちゃん「ナラコとは関係ない、私の友達の友達と銀座にお芝居見に行こうって急に決まったんだけどさあ。友達の友達は東京に住んでてね。『5千円くらいで宿泊できる』って教えてくれたの!」
私「じゃあその人に聞いてみれば!」
Nちゃん「5千円くらいで宿泊できるって聞いたの!」
私「その人に聞いてみれば!」
Nちゃん「ナラコ東京にいるし知ってると思って!」
私「知らない! ネカフェにでも行って自分で調べれば?Nちゃんこそ地方都市だけど超都会に今住んでるじゃん! ネカフェいくくらいすぐでしょ!」
Nちゃん「うん、5千円くらいで知らないかなと思って!」
私「知らんわ!」
…
結局私が「ウチに泊めてあげる」というまでこの会話は繰り返されました。
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Nちゃんは自腹きってアメリカ留学してて、
急に親元に何日か戻ってきてはまたアメリカに行って…を繰り返してました。
国際電話って、高いじゃない。
今の世の中はもう、通話なんて使わないで、
テキストのみでのコミュニケーションが当然になったけど、
当時はメールはあるけどSNSはなく。
Nちゃんはメールよりも電話派で。私もまぁまぁ電話派で。
でも高いじゃない(2度目)。
それでも私はNちゃんに電話してました。
理由は友達が少なかったから。です。
小学校中学校のころ、自分の場面緘黙症が出ない数少ない相手でした。
その後も友達を作れる数は少なかった。
Nちゃんが「ナラコ?そんなの放っておけばいいやん。放っておけば向こうから電話してくるわ、ナラコからかけてきたらこっちはタダや」
って言ってたのも知ってるけどかけてました。
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ある日急に帰国すると言ってきては(そういう時は親元の親の固定電話から連絡がくる)、
突然東京に行くとアポしてきてまた帰るNちゃん。
Nちゃん「今度は私がアンタの分もホテルとるからさー」
私、東京に住んでるから泊まらないでもいいんだけどな。。。
この時Nちゃんは携帯電話も持たずに東京へ来て、
私が待ち合わせ場所の新宿駅でNちゃんを探せ状態になりました。
私「ホテルはもう、チェックインしたの?」
Nちゃん「まだ!そんなの後でいいじゃない」
と、19時ごろまで都内を歩いて回り…
Nちゃん「ホテルの行き方知らないんだよね」
私「…どこにあるの?」
Nちゃん「知らない」
私「(はあ?)電話番号は?」
…私がホテルに電話をかけて、最寄り駅を教えてもらい…
でももう真っ暗だし、駅からも離れてるしで、なかなか見つかりませんでした。。
ホテルの人ごめん。0時直前チェックイン。
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翌朝。
Nちゃん「ナラコ、メークしてくれない!」
私「はい!?」
Nちゃん「ナラコのほうが上手いし」「私が化粧するとちっとものらへんねん」
見せられたパウダリーファンデとスポンジ…
スポンジは洗ったことないようですっかり様変わりしてて、
パウダリーのほうはすでに様変わりしているスポンジを繰り返し押し付けられたからなのか、表面は全部脂コーティングされていた…
私「…それはのらないよね」
Nちゃん「これは!お母さんから借りたやつだからっ!」
「でもどうしよう。私色白いやんかぁ。お母さんの借りてきてみたら、お母さんのほうが色黒だから…っ どうしようこんなの首の色と合わないよねえ」
…私、Nちゃんを無視して無言で、
硬く折り曲げたティッシュをヘラにしてパウダリーファンデを削ったら、…脂コーティングが剥がれて普通の色のファンデが出てきました。
私「スポンジは洗った方がいいで」
Nちゃん「…お母さんのやし」
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なんとかチェックアウトまでこぎつけて。
渋谷あたりを観光で歩いてる時、
Nちゃん「服が気に入らない!着替えたい」
と言い、
着替えると
Nちゃん「〇〇って洋服のお店行きたい」
私「それどこにあるの?」
Nちゃん「知らない。けど表参道やねん。」
私「それだけじゃあ私もわからないよね」
Nちゃん「電話番号ある」
私「自分でかければいいじゃない」
Nちゃん「でも、東京の道案内されたってアタシわからんし…」
私「表参道からどっちに行くか自分で聞いて!」
Nちゃん、自分で電話かけたのだが…
Nちゃん「●●って通り沿いだって」
私「●●? おかしいなあ。表参道駅が最寄だよね」
Nちゃん「うん」
私「そんなのわかんないんだよねーどこだろう」
Nちゃん「…●●って言ってた」
私「おかしいなあ、最寄は表参道駅だよね?」
Nちゃん「いいや」
私「は?」
Nちゃん「ちがう」
私「は?表参道って言ってたじゃん」
Nちゃん「さっき電話したら明治神宮前だって…」
私「先に言ってよ」
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なんとかNちゃんの言う洋服屋に近づいたら、
Nちゃん「ちょっとまって!お化粧なおすから!」
と、建物の陰に隠れてメーク直しを開始。
まぁ。ここまでで(男にあうんだな)はわかるんだけど。。。
もう30中盤ぞ。…Nちゃん称するところのケチな私にはその姿がカワイイとはちっとも思えませんでした。
サプライズで来店されても相手の男は仕事中ですからねぇ。
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およそ1年後。
私はTU-KA-ってとこの通信会社使っていたんですが、
それがなくなってauに移行せねばならなくなった時、
メアドも電話番号も変更しました。
メアドだけはNちゃんに教えたけど、以後こちらから連絡しなくなりました。